その1 銘木は「木のすぐれもの」

Q1 なぜ「銘木」を「名木」と使い分けているのですか?
A1 名木というのは、よく神社や名刹などにある樹齢を経た大木や、たとえば秀吉お手植えといわれるような木、また、その地方の風習や因習の中で人と密接な関係を持って愛されてきた木などをいいます。
これに対して、そういう由緒ある名木や山の中にあった古い木などで枯れたり倒れたりしたものから、いい材がとれれば、人が手をかけて、建築材として再び蘇らせたものが銘木なのです。
Q2 銘木は一般の木材とは違うのですか?
A2 違います。特にその形状、材質、色、艶、木目などが優れた木のことを、昔から木材と分けて「銘木」と呼んでいます。
Q3 銘木にはどんな種類があるのですか?
A3 原木丸太からすでに銘木であるもののほかに、半製品の状態(木挽や製材機にかけて、大割、板引きしたツキ板・盤用材、板類など)になって初めて銘木といわれるもの、そして製品になってから銘木になるものがあります。
Q4 銘木には条件といったものがあるのですか?
A4 それは一口には言えません。たとえば板類をとるためには、樹齢が二百年以上はほしいところです。幅広く,長く,狂いのない材が取りやすいからです。樹齢のたった木は、年輪が詰んでいるので、きれいな木目が取れ、独特の光沢も備わっているからです。
Q5 育った環境は条件に入りますか?
A5 入ります。木は樹齢によって、生育に適した自然環境というものがあります。自然の条件に恵まれて産地が形成された例として、秋田杉、北山杉、吉野杉、木曽檜などがあります。木によっては厳しい自然環境のほうがよいという場合もあり、たとえば屋久杉や伊豆七島の桑などは、気候は温暖でも、雨が多く、風が強いことが育てた銘木といえます。
Q6 変わった形の木も銘木になりますか?
A6 自然の力によって、非常に珍しく変わった形になった木も銘木として珍重されています。ただ、そうした変木の場合、回りの材料とよく調和させて使うことが重要です。節のある場合でも、節目が美しく、バランスよく配置されていて、それを上手に生かせば銘木といえるでしょう。
Q7 素材の良さが銘木の条件ですが、その良さを引き出すために、特別に手を加えたりすることもあるのですか?
A7 銘木は、切り出してから製品になるまでに、一般材とは桁違いに多くの人の手がかかっています。その木がもつ良い表情を、より引き出すために、例えばこの木は削ったままがよいとか、削って漆を塗るとか、同じ木の煮た汁をこすりつけるとか。永い経験と木に対する厳しい目を持ったプロによって、銘木として仕上げられるのです。
Q8 銘木屋さんと材木屋さんは違うのですか?
A8 もちろんです。一般材と呼ばれる家の構造部材、つまり建前のときに見られるような木材を扱うのが材木屋。銘木屋は建前後の内部化粧材を扱うという違いがあります。
一般の木材は、ある程度まとまった単位で取引されるのに対し、銘木の場合は一本・一枚単位で取引されることが多いのです。銘木は、昔はほとんど足を使って探しましたが、今では業者間で各地の情報を互いに交換して探しだします。しかし問題は、探しだした木からどんな材がとれるかです。樹齢をとり過ぎた木の中には、大きな洞があったり、枝が張りすぎて銘木になる部分が少ないという場合がよくあり、必ずしも銘木として生き返らないものがありますから。そこが、銘木屋にとって苦労するところです。
Q9 素人から見れば同じに見える木でも値段に差があるのはどうしてですか?
A9 産地、樹齢、色、艶、木目の美しさなど、銘木としての条件をどれくらい備えているかで、値段は変わってきます。同じように見える木でも、目利きといわれる人が見て、希少価値や特殊性を判断し、それに需要と供給のバランスが加わって値段がつけられます。
たとえば、同じ直径の磨丸太でも、十五年ものと、三十五年ものとでは、値段は業者の間でも五倍から十倍も違ってきます。三十五年ものは年輪の目が詰んでいるため、十五年ものに比べて、磨いた肌がはるかにきめ細かく、つややかです。しかも、施工後も形状が変わりません。これに対して十五年ものは、目が粗いので、施工後収縮するため、(俗にいう木やせ)、干割れ、ねじれ、曲がりなどが起こりやすく、色むらも出やすいのです。こうした差は樹齢の二十年の違いによるもので、樹齢が銘木としての価値を決める例といえます。
次に板の例をあげてみましょう。中杢は天井板の中でも最高級の一つといわれます。中杢とは、板の中央部分に板幅の一割くらいの目幅がまっすぐ伸びていて、節もキズもなく、左右の柾目が均一に伸びているものをいいます。こういった材は、大径木の中心部からしか得られません。しかも、何百年もの間、人が若いうちから枝打ちをして丹精した木か、自然の中で偶然に生み出された節のない木からでないととれないのです。この希少価値ゆえに、他の板に比べて高価になります。
銘木は値段があってないようなものだとよくいわれますが、それは大変な誤解です。

 

 


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